関ブロ会報 No.12007.9.30 |
挨拶
造形美術教育の連携をもとめて
関東甲信越静地区造形教育連合 理事長 辻 政 博
一 はじめに
6月23日におこなわれた都県代表者会議で、本年度より関東甲信越静地区造形教育連合の理事長に就任いたしました東京都図画工作研究会会長の辻 政博です。よろしくお願いいたします。
さて、現在の時代の変化は、私たちが推進する造形美術教育にとって、大きな影響を与えています。否、日本の教育界にとっても大きな変化が訪れているといっても過言ではないでしょう。
「改正教育基本法」「教育三法」の成立、また、社会的な状況をいえば、グローバリズムの中で「構造改革」や「効率主義」が、教育現場にも押し寄せています。さらに、本年度は、「学習指導要領」の改訂の年でもあります。
二 人間形成としての造形美術教育
造形美術教育は、「時間数が削減」されて以来、常にその存続が問われてきたように思います。アンケートによると、実に子どもたちの80パーセントが「図画工作」を好きだという結果がでているにもかかわらず、その「必要感」が、学校教育のなかで、また、社会のなかで希薄なのです。
私たち造形美術教育にかかわる者にとって、子どもたちの育ちに「必要不可欠」な教科であることを世間に知らせ、広めていくことは、大きな課題です。
この度の東京大会は、「人間形成としての造形美術教育」をテーマに掲げましたが、V・ローエンフェルドやH・リードなどの古典を引き合いに出すまでもなく、学校教育においては、たんに「美術の教育」ではなく、「人の育ちのための造形美術教育」という原点が、再考されなければならないでしょう。
自らのからだとこころを存分に使い、感じ、考え、試行錯誤しながら、表現し、さらに、思いを伝え合い確かめていく経験、プロセスは、人間形成の上で極めて重要なものであると考えます。
三 連携の必要性と可能性
関東甲信越静地区造形教育研究大会は、今回で47回を迎えます。実に半世紀の長きに渡って、諸先輩の努力が積み重ねられてきた結果でしょう。さらに、それらの意志を継続させていくことが私たちの責務であると思います。
けれども、造形美術教育関係者は、これまで「一枚岩」となって、造形美術教育の重要性を社会に向かって表明してきたかどうかを考えると、ややこころもとないと言えます。
それは、図工や美術にかかわる教師は、いわば近代的な芸術家のごとく個性的で、一匹狼的なイメージがあり、他者とかかわりながら活動することが不得手な側面があったかもしれません。
価値ある「声」もそれが、あまりに小さいならば、相手には届かないしょう。各地区の「声」を響き合わせて「大きな声」にしていくことが、社会に造形美術教育の価値を伝えていくと考えます。
幸い、「関東甲信越静地区造形教育連合」は、組織的力という点で、かなりしっかりした体制をもつ研究団体です。ローテーションがしっかりと定まり、大きな研究大会が、毎年、各地区で開催されています。来年は群馬県、再来年は千葉県と、すでに研究が始動しています。
今後は、こうした「土台」をもとに、地区間のより具体的な連携が深まることや上部団体である「全造連」と連携するなかで、造形美術教育の大きなまとまりや動きをつくりだしていく可能性をもっています。
四 おわりに
少し話しが大きくなってしまいましたが、こうした造形美術教育の大きなうねりがつくれないならば、10年後の改訂には、それこそ、教科の存亡にかかわる事態が起こりうると考えます。
未来を生きる子どもたちのために、造形美術教育のもつ役割、価値をあらためて問い直し、教科としての重要性を内外に発信していくには、私たち造形美術教育関係者が連携し、協力することが必要だと考えます。
(東京都文京区立誠之小学校)
山梨
山梨の造形教育
山梨県理事 石川利彦
一 山梨県造形教育研究の現状
本県の造形教育研究の現状は、県内の小学校の主として図画工作関係教師と中学校の美術教師で組織している山梨県造形教育研究会を中心にして、保育園や幼稚園の保育者や、さらに高等学校の美術教師と連携した同心円のような山梨県造形教育連合をもって組織しています。
二つの組織ともそれぞれが普段から造形教育活動を意欲的に取り組んで、その成果を年度末の合同研究大会で相互に補完し合う形で発表し合っています。
二 山梨県造形教育研究の課題
山梨県造形教育研究会は、県内全体の小中学校図工・美術教師で組織しているため、それぞれの地域でどのような造形教育研究をしているのか、その内容把握が課題となっています。
また、山梨県造形教育連合は、関ブロ造形教育研究山梨大会に向けた研究組織とタイアップしているので、現状を継続しながら、さらに発展できるような取り組みが課題になっています。
三 山梨県造形教育研究の活動計画
山梨県造形教育研究会の活動では、年間を通して実践提案と研究協議を内容とした二回の研究会、また、講演会と実技研修を中心にした春季と夏季の二回の研究大会があります。その他に特別企画として「甲斐のぼこんとうよっちゃばれ展」と銘打った児童・生徒の表現過程を重視した作品展を毎年県立美術館で開催しています。
四 山梨県造形教育研究の活動報告
山梨県造形教育研究会の活動報告は、今年で40号になる「山梨の造形教育」の冊子で把握することができます。その年度に実施した研究大会の記録や講演内容を分かりやすくするために写真や図表なども取り入れたり、各郡市の造形活動の報告では、研究テーマや目的、内容と方法、成果と課題を視点にして特色ある活動実践の報告としてまとめたりしています。さらに、県下の授業実践の紹介を実践者の「顔の見える実践」ということでイラスト入りで親しみのある授業に役立つ活動報告になっています。
また、山梨県造形教育連合の活動報告は、関ブロ造形教育研究山梨大会の研究紀要や報告書の中でそれまでの活動内容をまとめた形の活動報告になっています。
栃木
関ブロ栃木大会以後の展開について
栃木県理事 半田勝久
本県の場合、栃木県を会場とする関東大会あるいは全国大会の時には、各部会が結束し、役割を分担してその任にあたりますが、平常は各部会が単独で活動しています。そこで、最初に各部会の活動の概要を紹介し、次に部会を越えた連携を模索する動きを紹介します。
幼稚園‥栃木県幼稚園連合会
教員の資質向上や経営の安定等を目指して各種研修会の開催や広報活動、振興活動等を行っています。教育研究委員会が中心となるいろいろな研修のうち、昨年は、表現的な領域を取り上げた研修を、保育テクニカル講座で三回にわたって開催いたしました。
【第一回:身体表現、第二回:音の表現、第三回:造形表現】
小学校‥栃木県小学校図画工作部会
県内の各支部では独自に実技研修会や講演会、指導案検討会、授業研究会、美術展の審査を通した鑑賞研修会等を行っています。支部によっては実技研修を中学校と合同で行っているところもあり、それらの活動は年2回の支部長会議で情報交換が行われます。その中で宇都宮支部の「子どもの造形展」はコンクール出品作とは違った普段の子どもたちの作品に触れられる良い機会として、高い評価を受けています。本年度はこの他に県大会もあり、公開の研究授業も開催されます。
中学校‥栃木県中学校美術部会
毎年、部会の研究テーマを決め、それに基づいて各地区が独自の特徴ある活動を展開しています。地区間の情報交換は年3回の地区代表者会議で行われ、その活動は美術部会報にまとめられています。さらに、授業研究を中心とした研究大会を毎年一回開催しています。また、平成一六年の関ブロ栃木大会の研究を継続するために、各地区から研究員を選任し、研究委員会を組織して活動を続けています。
高等学校‥栃木県高等学校美術工芸部会
毎年違った内容で教員の実技研修会や教科研究会を開催しています。また、生徒対象の実技講習会も年に2回開催しています。毎年開催している生徒の美術展とデザイン展では、主催の違った2つの展覧会の図録を昨年度より一冊にまとめました。また、教員の作品展も毎年開催し、会員の日頃の研究成果をまとめた教科研究集録も毎年発行しています。
ところで、平成一六年の関ブロ栃木大会で学校と美術館が連携したことがきっかけとなって、県内の小・中・高等学校教員と美術館の学芸員、それに教育学部美術科の大学生と教授たちが加わって情報交換の場が生まれ、それが、美術鑑賞教育研究会設立への動きとなって、「あーとネット・とちぎ」が発足しました。
この「あーとネット・とちぎ」のホームページは美術鑑賞教育に特化したサイトではありますが、これに参画している団体が自由に書き込めるページをもち、各部会の活動も情報として広く発信しています。また、美術館からワークショップ等の協力依頼があった時には、それに会員が個々に応答し協力する参加型の連携ができるのもこの研究会の特徴です。
今後は幼稚園部会の参加もお願いしてさらに広がりを持たせ、幼・小・中・高・大・美術館の幅広いネットワークシステムを構築してゆければと考えております。
神奈川
子どもの心と体を育む造形教育
神奈川県理事 木川田 光弘
総合的な学習の時間が1コマ削減され、高学年に英語活動が新設されます。学習時間も週当たり1から2コマ増えそうです。
総合的な学習の時間が新設された趣旨やねらいは十分に達成されたのでしょうか。各学年に内容を位置づけることなく、各学校の創意工夫に任せることでよかったのでしょうか。新しいことを始める前に、今までやっていたことが、子どもにとってどうだったのかをしっかり評価をし、改善を図るという手続きを確実に行いたいものです。併せて、保護者、国民に対し、説明責任をきっちりと果たしてほしいものです。
横浜市では、今、小・中一貫のカリキュラム作成の準備を進めています。今夏の教育課程研究協議会は、全教科・領域において小・中合同開催をしました。図工と美術の学習指導要領目標や内容の関連、実際の授業実践から小・中の内容の関連性や系統性について、小・中の教員が協議をしました。
合同開催の成果としては、小・中の円滑な教育課程の接続について、図工・美術を指導する教員の課題意識が深まったことです。今までは、教科書題材に基づいて、図工の授業をしていればよかった。中学の美術もしかり。しかし、本当にそれでよかったのか。子どもの資質・能力は、目指す方向に十分伸ばすことができたのか。今まで、子どもの側に立った教師の振り返りが、不十分であったことも改めて認識をしました
横浜市では、今年度示される文部科学省の学習指導要領の方針・内容を踏まえ、横浜らしさを上乗せした「横浜版学習指導要領」作成の作業を進めています。また、横浜市小・中学校教育研究会では、11月28日(水)を小・中交流日と位置づけ、全市小・中学校で小学生と中学生の交流会が様々計画されています。中学校ブロックでの教員の交流も、今年度から年間計画に基づいて行われています。これらの一連の取組は、横浜市教育プログラム(5年計画)に基づいて、子ども一人の9年間の育ちを保障するため、横浜市としての責任ある取組といえます。
子どもが好きな図工・美術は、これからも学校の授業で学べるのでしょうか。大人の都合で、図工・美術の枠組みや内容が変えられたり、歪められたりすることのないよう子どもや保護者と一緒に見守っていく必要があります。さらに造形活動を通した子どもの真の姿を、広く大人に発信することを通して、心と体を育む造形教育の重要性を訴えていくことも重要であると考えています。
長野
長野県美術教育研究会の今
長野県理事 寺島_利
目的は美術教育の 研究と振興
長野県美術教育研究会は本年61年目を迎える職能団体です。この目的から県大会・研究推進委員会・県児童生徒美術展・美術教育関係諸団体との連携等の研修を重ねています。
各校種と地域が一体となる構成
会員数は三七〇名で小・中学校・特別支援学校と信州大学教育学部からなり、学校数の約6割強の組織率です。この数値は20年来同様に推移しています。これは先生方の「図工・美術教育を通した人間形成」への絶えることのない情熱と教育実践の反映であります。そして昨年の全造大会・関ブロ大会で発信した「わたしっていいな!
〜“いろ・かたち”生きあい・学びあい〜」を受けて、本年度は大会テーマ「わたしっていいな!〜ちょっといいじゃん、この色、この形」のもと第61回安曇野大会(11月2日)へと授業研究会を展開します。県大会は毎年全県16支部のローテーションで美術教育の研究と振興を図っております。
大会を支える研究推進委員会
この県大会は、担当各支部の独自性のもと、本会研究推進委員会の支援で実施されます。研究推進委員は全県から推薦された会員で組織し、本会活動の中核を担っています。本年も開催地の安曇野支部に応えて、安曇野の地で一学期は幼・小・中の事前研究授業への支援3回と研究推進委員会2回を実施し、奥村高明文科省調査官と橋本光明信州大学教授の指導助言を得て、子どもたちの学びに根ざした研究を推進しております。
沿革誌でつなぐ本会の精神
昭和58年5月刊行「長野県美術教育研究会沿革誌」は本県の美術教育を志す人の珠玉の文献です。本書には昭和22年11月1日の「第一回県大会」前後から克明に記され、諸先輩の本教科への思いが鮮烈です。当時の図画工作科(中学も同教科名)の教育的な意義や教科の本質を実践研究する立ち上げの状況が記されています。ここには私たちが求める思いと重なる先見性と普遍性があります。それは子どもたちの色や形を通した学びの育ちに根ざす本研究会を貫く精神が光ります。平成11年には「第二版」が刊行され、今また「第三版」の構想・企画が始まりました。過剰な情報化の今こそ研究や資料さらに情熱が散逸しやすい現実があります。日常実践を真摯に整理し、若い世代を中心に編纂する本会の方針は職能の伝達からも意義深い活動です。
連携から足元を見つめ直す研修
長野県は小・中学校の人事交流が比較的円滑なため子どもの成長を一体となって研究しやすい状況にあります。また河川や峠など山国の自然の境界で切り取られた風土から県下各地に特色ある文化が息づいています。個性的な美術館の多い県でもあります。本年、子どもの育ちに根ざした新たな鑑賞教育を求める「miteながの!研修会」を地域美術館・信州大学・本研究会の連携からすでに本年二回実施し、各地域に展開中です。
末尾で恐縮ですが、日本の真ん中に位置しそれぞれに光を発する身近な関東甲信越静地区の皆さんとの連携こそ、それぞれの足下と日本の図工・美術教育の将来を担うものと確信しております。
千葉
千葉県の造形教育
千葉県理事 鷹野 忠洋
千葉県教育研究会造形教育部会は、研究主題に基づいて、県下の先生方がそれぞれに所属する四分野七部会による部会研究と、春の研究大会及び秋の研究発表大会を二本の柱として研究を進めています。会員数は、小中学校合わせて一二九二名を擁します。
研究主題《自分らしい発見、思いっきり造形》を掲げ、平成九年度より一貫して研究を積み重ねてきました。
☆自分らしい発見…ひとりひとりが自分のよさや可能性に気づき、実感する。《主体性と自己 実現の発揚》
☆思いっきり造形…つくりだす喜びと表現する楽しさを味わう。《豊かな表現力と創造の喜び》
これは、ひとりひとりのよさや可能性を伸ばし、豊かな情操を養うことを目的としており、次代を担う子どもたちの生涯学習の基礎づくりにおいて、造形教育の果たす役割がここにあります。
本会は、発足当初より千葉大学の先生方の指導・助言を受け、大学との密接な連携のもとに、長年にわたる、県下の先輩諸先生方の造形教育に注ぐ情熱と、教育行政の力強い支援を受けながら、歴史と伝統を築いてきました。
秋の研究発表大会は、今年で第五十八回を数えます。現在全県を6つのブロックに分け、年度毎にローテーションを組んで開催しており、本年度は十一月に香取地区の開催を予定しています。児童生徒の実態に即して、その学校その地域の特性を生かした教材の開発を重視し、まさに地域に根ざした造形教育の実践を目指しています。 大会当日は、全体会・分科会を持ち、お互いの意見や考えを出し合い、交流し合う貴重な研修の機会となっています。
平成二十一年度には第六二回全国造形教育研究大会及び第四十九回関ブロ千葉大会を迎えます。現在、二年後の大会開催に向けて準備を進めるとともに、本会の研究主題も新たに設定し、幅広く幼・保・小・中・高等学校を含めた千葉県造形教育全体の在り方と方向性を究明してまいります。大会開催の折には、千葉県の造形教育の実際を、できるだけ多くの先生方に見て頂きたいと思います。お待ちしています。
今後も千葉県の造形教育の柱となり先生方の研究の場として有効に機能していけるように努めてまいります。
東京
造形・美術教育の充実向上を目指して
東京都理事 牧井直文
東京都では、造形・美術教育の振興と教員相互の研究交流を進める目的で、校種別に研究団体が組織され、それぞれに活動を行っています。主な団体としては、東京都図画工作研究会(都図研)、東京都中学校美術教育研究会(都中美研)、東京都高等学校美術工芸教育研究会(都高美工研)などがあります。また、学校種を超えての連携を図るため、東京都造形教育協議会(都造協)が組織され、上記3団体を中核において、幼稚園、特別支援学校、大学等も含めた取り組みを進めています。
東京都図画工作研究会の活動は、年に1回研究大会(都図研大会)を開催するとともに、実践を基にした授業研究、図工の専門性強化を目指した研修の推進、図工教育のあり方や方向性についての検討、冊子「子ども主義宣言」の刊行、ホームページによる情報の発信など、密度の濃い取り組みを続けてきており、各方面から高い評価を受けています。
また、東京都中学校美術教育研究会でも、年1回研究大会(都中美大会)を行う他、講師を招いての研究会や美術館研修、実技研修など研修機会の拡大を図っており、美術教育の充実と授業力向上に努めています。また、会員の作品展示会などを実施し交流の場としています。
東京都高等学校美術工芸教育研究会は、このところの東京都の組織改革の中で、自主参加の任意団体として位置づけを変更されましたが、造形美術の専門家として質の高い授業実践を進めるため、継続的に研究活動を行っています。
現在、東京都では造形美術教育の校種間交流を今まで以上に進め、研究・研修機会の更なる拡大充実を図ろうとしています。また、その条件整備として、東京都造形教育協議会のあり方を見直すとともに、新たな将来構想の検討を始めています。今年は、11月に関東甲信越静地区造形教育研究大会(関ブロ大会)が東京都で開催されることになり、校種別の研究団体が連携して取り組む場面が多くなっているため、こうした検討も一層進むと思われます。
社会がめまぐるしく変化している今日、子どもたちの興味や価値観が大きく変わってきています。そして、造形・美術教育のあり方も今までとはちがった新たな発想が求められつつあります。また、その一方で、教育における造形・美術の役割や必要性について、未だ社会的な理解が十分に得られていない実態もあります。私たちは、こうした現実を率直に受けとめるとともに、日常の授業改善を進めて、美術の重要性を広く啓発していくことに努めていかなければならなりません。各研究会の活動により多くの参加を呼びかけ、課題を共有し、相互に学び合い、造形・美術教育の一層の充実を目指したいと考えます。
静岡
静岡県美術教育研究部
静岡県理事 堀 則雄
静岡県美術教育研究部は、図工・美術科の教科研究を希望する県内の教員で構成され、小・中合同で研究会等を開催しております。その大きな研究会が下記の「美術教育研究部夏季大会」です。
【今年度の夏季大会の様子】
テーマ 「恵み〜輝き、響き合う〜」
期 日 8月9日(木)
会 場 川根町民文化会館「チャリム21」
内 容 午前 全体会 講演会 午後 分科会
【講 演】
講師 常葉学園大学造形学部教授 坂田 和之 先生
演題 『図工・美術教育に期待すること』
《大会を振り返って》
本年度の大会は「恵み〜輝き、響き合う〜」のテーマのもと、県内各地より多数の参加者が集まり、盛大に行われました。川根町民文化会館「チャリム21」を会場として、これからの美術教育を考える充実した大会となりました。
午前の部では、常葉学園大学造形学部教授の坂田和之先生をお迎えし、ご講演をいただきました。カンボジア・クメール伝統織物研究所を立ち上げた森本喜久夫氏が、現地の人々と共に伝統的なクメール織物を残していこうとする活動を紹介してくださいました。これからの図工・美術教育の在り方についてのヒントが森本喜久夫氏の活動の中にあり、示唆に富むお話でした。
午後の部は、第1分科会「地域の題材・素材」、第2分科会「地域の人材活用」第3分科会「響き合う鑑賞」の3つの分科会に分かれ、「ときめく題材や素材を活用した授業」「思いを広げて子どもが輝く授業 」「 表現活動や生涯学習へつ
ながる鑑賞」について積極的な意見交換がなされました。本研究部の研究テーマである「輝き、高め合う造形活動」について議論が深められました。
日々の実践をもとにした提案者の発表内容からは、お互いの良さを認め合いながら造形活動に取り組む子どもたちの様子が伝わってきました。子どもひとりひとりの造形活動を誠実に見つめようとする、内容の濃い実践発表でした。また、地域とのかかわりや友だちとのかかわり、作品とのかかわりなどこれからの図工・美術教育の在り方を探る貴重な機会となりました。
(事務長 寺澤光昭)
埼玉
埼玉県美術教育連盟の紹介
埼玉県理事 茅野 憲一
埼玉県美術教育連盟は埼玉県内の小・中学校の図工・美術教育の教職員で組織された埼玉県の図工・美術教育の振興を図ることを目的とした組織です。会合を開く度に、たくさんの方々の参加と応援をいただいているこの会ですが、おかげさまで今年に発足60周年を迎えることができました。これまでの先輩諸氏が築いてこられた本連盟の歴史に敬意を払うとともに、今後も子どもたちの豊かな成長を願い、活動を展開して参りますので、関係のみなさまには引き続きご理解とご協力を賜りたいと思います。
本連盟の主な活動は、美術教育に関する調査研究、研究大会や児童・生徒美術展の開催、関係機関・団体との連絡調整等があります。その運営の3つの特徴について以下に紹介いたします。
1つめは、この連盟の運営を常に小・中学校の連携の下で行っていることです。
本連盟は、小・中学校の交流が盛んです。組織の構成から、研修会、研究大会、展覧会等の場面で小・中の先生方が同じ土俵で協力して活動や研究を展開しています。連盟の研究でも小・中学校を通じた、子どもたちの学びの系統性や発達課題に応じた題材研究を行っています。
2つめは、毎年2回の造形教育大会を開催していることです。2回の造形教育大会はそれぞれ、独特の特徴を持った、現場の先生方に寄り添った大会です。
毎年夏休みに開催する1つめの大会が「創造体験研修会」です。この会は、先生方による具体的な作品づくりを通して、素材の可能性を追求したり、題材を開発する参加者主体の体験型研修会です。題材を開発することが、実技研修会と大きく違うところです。
毎年11月に実施する2つめの大会が、「小・中授業研究会」です。この会は、先の創造体験研修会の成果を受け、研究授業を実施し、題材と指導について研究する会です。毎年、近隣の小・中学校で行うので、ここでも小・中学校の交流が進みます。開発した題材の検証にもなる先生方の指導力向上にも貢献しています。
3つめは、造形教育大会を県内5ブロックの地域による持ち回りで開催していることです。かつては連盟の専門部会が企画運営をしていたものを、各地区に委任することで中心だけではなく各地域が活性化することをねらったものです。これによって県全体の活性化を目指しているわけです。
今後は、研究内容の充実を目指すとともに、本連盟の取り組みが、より多くの方々に知ってもらえるよう情報の発信にも力を入れていく予定です。
(事務局長 山田一文)
新潟
新潟県美術教育連盟の活動
新潟県理事 竹内 正人
新潟県美術教育連盟では、今秋十一月十六日(金)、上越市を会場に「第二十六回新潟県美術教育研究大会上越大会」を開催します。当県では、二年に一度開催される研究大会です。本大会で掲げたテーマと特色は次の通りです。
[大会テーマ]
輝け!「つくる私 かかわる造形つながる思い」
〜たくましく創造していく心を育てる造形教育〜
[特色]
- 脳科学の視点から図工・美術教育の重要性の認識を新たにする。
- 各校種が一体となったテーマ別分科会を設定し、校種間連携の糸口を探る。
- ワークショップで、オリジナル教材の授業活用とその在り方を考える。
○大会テーマについて
一番大事にしているのは「かかわる造形」という部分です。子どもは、周囲の仲間や材料、道具、表現の場など、様々な事象とのかかわり合いの中で生き、表現活動を行っています。特に、仲間との関係は、表現意欲にも大きくかかわってくる部分です。他者との関係性の中で自分を生かす、そして、仲間とともによりよく生きていく力を身に付けていくことが重要です。図工・美術を担当する教師は、点数による冷たい評価ではなく、子どもの目線に立った温かなまなざしで指導に当たることが大切です。では、どのような題材をどのように取り上げ、どう授業を構成したらいいのでしょうか。分科会で話合いを深めたいところです。
○茂木健一郎氏講演会
講師に脳科学者・茂木健一郎氏をお迎えします。茂木氏は、「クオリア」(感覚のもつ質感)をキーワードとして脳と心の関係を研究しています。今回は、子どもの発達における図工・美術教育の意義、脳科学の視座からみた本教科の必要性について語っていただく予定です。
○オリジナル教材ワークショップ
何かと雑務に追われる毎日、「前年度の教材を何の工夫を加えることもなく今年もそのままやってしまった」という声が、ある研修会の折に聞かれました。そんなところから発想された場、それが、自作教材を紹介し合い、授業活用を考えるワークショップです。どんな材料でどういう言葉を投げかけると授業が盛り上がるか。どんな課題提示が好奇心をふくらませるかなど、実際につくる行為を通して考えます。
本大会を通して、図工・美術教育に携わる私たちが、教科教育そのものの在り方を共に語り合い、認識を新たにすることができれば幸いです。
( 事務局 大塚 啓)
茨城
茨城県の研究及び活動
茨城県理事 関 晃
一 研究主題
ひろがり 深まる 確かな創造活動を目指して
二 研究主題について
本県図画工作・美術教育研究部では、平成一六年度より「ひろがり 深まる 確かな創造活動を目指して」を県の研究主題として研究を進めている。「ひろがり 深まる」には、学校教育の中で行われる創造活動での学びにより、子どもたちがつくりだす喜びを感じながら、「よりよいものをつくりだしていきたい」「自分の感覚をより研ぎ澄ませていきたい」といった生き方にかかわる学びにまで、ひろげ深めていきたいという願いが込められている。そして「確かな創造活動」には、そういった学びを、教師と子どもが共に、実感できる授業を目指していこうとする意味合いが込められている。
三 研究内容
本県研究部の最大の特徴は、県の研究主題の具現化を図るべく、県内五ブロック(県北・中央・県東・県南・県西)が、それぞれの地域の実情に即して研究を推進しているところにある。その成果を発表する場として、二年に一度、会場を県内五ブロックの持ち回りにより、研究大会を開催している。また、本県の図画工作・美術教育の現状把握と、これからの指導の指針を探るために、県内郡市ごとに選出された研究調査員により、情報交換会、実践発表会、アンケート調査等を行っている。ここで発表された実践については、指導事例集としてまとめ図工・美術に携わる先生方に紹介している。さらに、各種造形教育団体等との連携を図り、コンクールや展覧会といった児童生徒が造形活動の成果を発表できる場を積極的に設け、造形教育の可能性を追求している。これらの事業等の成果と課題は、年度末に広報誌としてまとめ、県内全小中学校に配布し、これからの研究や指導力の向上に生かせるようにしている。
四 主な活動
- 郡市部長会及び研修会
- 夏季実技研修会
- 研究調査委員会
- 第四十五回県図工・美術教育研究大会 北茨城大会の開催
期日 十月二十六日
会場 北茨城市立精華小学校
北茨城市立磯原中学校
- 県小中学校芸術祭美術展覧会への参加
- 部報第三十七号の発行
五 研究部役員(一部)
部 長
関 晃(東海村立白方小学校)
副部長
秋山清秀(ひたちなか市立平磯中学校)
菊池 繁(北茨城市立富士ケ丘小学校)
舘 亮幸(鉾田市立新宮小学校)
沼尻正芳(つくばみらい市立伊奈東中学校)
雨貝義孝(筑西市立下館西中学校)
事務局
安田和人(茨城大学教育学部附属小学校)
(部長 関 晃)
群馬
群馬県における研究会の取組と課題
群馬県理事 尾内 理樹
本県では、平成十四年から大会テーマを一新するとともに、研究会の在り方・運営を、小中の連携を視点に検討をしなおし、改善を図る中で造形教育の充実に取り組んできた。
一 大会テーマ
「自分らしさ、つくりだす力、いきいき 造形」
二 中核となる活動内容
年間二回の研修会(夏期研修会、秋期研修会)を核として造形教育研究会の活動に取り組んでいる。
「夏期研修会」(本部主催)
十四年度より分科会を左記の五分科会とし、小中の連携に視点を当てた小中合同の分科会として運営している。実践発表は小中一名とし、県内各地のローテーションで対応している。
(分科会)
- つくりだす力としての基礎・基本
- 素材との豊かなかかわり
- 自分らしい表現・表現の広がり
- 自分らしい見方・感じ方(鑑賞)
- いきいき造形としての評価
「秋期研修会」(各地区持ち回りで担当)
各地区がローテーションにより地域の実態に応じた授業(小学校、中学校)と作品展を公開し、全体会ではその年度の造形教育にかかわる成果と課題を確認している。
三 現状と課題
・夏期、秋期と年間二回の研修会を柱に造形教育の充実に取り組んでいるが、教師の多忙感、出張旅費等の問題が重なる中で、参加者の確保が困難になってきている。また研修が半日日程のため時間的な制約があり十分な意見交換にいたっていない。
・ここ数年、市町村合併が進む中で、各地で培ってきた特色ある活動や組織的な連携、実践力が弱まってきている。
・各学校、年々学級数が少なくなる中で特に中学校では美術担当を非常勤で対応する学校が増え、美術科の本務者が減るとともに、若手を育てるなど、研修を支える各地の主任会等の活動が弱体してきている。
・附属小中が研究会の事務局としてフル回転してきたが、附属が法人化する中で事務局としての対応が難しくなってきている。
・児童生徒の表現活動の課題として、各学年での指導の系統性、小中のギャップが依然として大きな課題である。
四 新しい取組
造型教育が抱える現状を改善するための取組の一つとして、退職された実践者を中心にして「群馬の美術教育を語る会」が発足し、造型教育を外から支える取組
が見られるようになってきた。
年二回の講演会・研修会を軸に、本県が抱える課題に視点を当て、現職はもちろんのこと、一般や学生にも参加を呼びかける中で造形教育の充実・啓発に取り組んでいる。現在六十名程
度の会員が組織されている。
(造形美術教育研究会会長 尾内 理樹)
編集後記
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